気品溢れる小さなチェアが優しい時間を与えてくれる、ミッドヴィクトリアンナーシングチェア。
nursingとは育児や看護、授乳といった意味で、ナーシングチェアは主にヴィクトリア時代に上流階級の家庭で使われ始めたといわれます。オークやローズウッド、ウォールナットなど良質の材が使われ、スプリングが入った生地張りのチェアは座り心地が良く、ブレードなどで飾られた贅沢な仕上がりでした。その座面は低く、授乳の時以外でもコルセットを付けた母親が体を曲げずに小さな子供と顔を合わせることができるものでした。
Mother and Daughter by George Goodwin Kilburne (1839-1924 London)
このナーシングチェアも、おそらくミッドヴィクトリアンの上流家庭で使われていたのでしょう。材はしっかりと詰まった上質のウォールナット。使い込まれた古艶は大切に使われてきた証であり、きめの細かい優しげな木目が心を落ち着けてくれます。
トップレイルのカーヴィングは控え目ながらとても手の込んだデザイン。柔らかな布、それに絡み合う飾り紐とタッセルが見事に表現されています。それはまるで本物の布のようにレイルをくぐり抜け、たおやかに垂れ下がり、タッセルは今にも揺れそうなほど繊細に仕上げられています。脚元はフルーティングのターンドレッグで、森の至宝といわれるウォールナットの艶が持つ魅力を最大限に引き出しています。移動しやすいようにキャスター付きのものが多いこともナーシングチェアの特徴です。
生地は薔薇とグリーンが上品な先染めのジャガード織り。刺繍のように細かな薔薇と葉は、それぞれがいくつもの色の糸で織り出され、咲き誇る様子が瑞々しく表現されています。また、グリーンの部分は角度のよって柄が浮き上がり、見るたびに違う表情で愉しませてくれます。
座り心地だけでなく、その愛らしい姿はサロンチェアとしてもお使いいただけます。100年を経た古艶と英国が愛する薔薇を纏ったチェアはこの上なく上品でありながら、どこか懐かしさを感じる佇まい。
ゆったりと身を預けたなら、ヴィクトリアンから続く安らぎのひと時が訪れることでしょう。
■英国
■主素材:ウォールナット
■推定製造年代:1870年代
■サイズ:幅54/奥行62.5/高さ77.5cm(座面までの高さ約35cm)
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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