優雅なヴィクトリアンのドローイングルームを彷彿とさせるファイヤースクリーンのご紹介です。
ファイヤースクリーンとは、文字通り暖炉の炎の前に置く衝立の事。薪がはぜて室内に飛ぶのを避けたり、直接炎の熱さが人の顔にあたるのを防いだり、暖炉を使わない季節に暖炉内を隠すために使われました。暖炉は部屋のインテリアとして中心的存在であり、富裕層のお屋敷ではクオリティの高いファイヤースクリーンがゲストの目を楽しませていたことでしょう。
Portrait of Victorien Sardou
by Auguste de La Brely(1878-1906)c.1885
種類としては炎に強い金属製のもの、そして木製のものがみられます。木製のものは木のパネル仕上げもありますが、装飾性が高いファブリックを嵌め込んだものが高級仕様として人気でした。ファブリックはゴブラン織りであったり、ジャガード織りであったり、そして刺繍の品物もありました。ファブリックが持つ豊かな表現と多彩な色はインテリアを演出するのに最適であり、お部屋の他のファブリックとのコーディネートも楽しめました。
今回ご紹介するのはフレームが木製、そしてファブリックが嵌め込まれたファイヤースクリーンです。
ファブリックはオリジナルで、一見するとジャガード織のようですが、実はシルクの地に刺繍が施されたもの。月桂樹に花束を組み合わせたエレガントなモチーフは、細いリボンを巧みに使用して表現されています。ベースは滑らかな繻子目で、クリーム色の繻子目には地模様のようにごく小さなスパンコールが1つづつとめられているという手の込んだ仕様となっています。
使用されている木は銘木ローズウッド。杢目の詰まった艶やかな輝きはローズウッドならではの表情です。全体が流れるような曲線でできており、アカンサスリーフとスクロールが緩やかに連なってファブリックを囲んでいます。トップの波を思わせるモチーフはホタテ貝のデフォルメでしょうか。ロココの影響を受けて左右非対称に仕上げられており、全体として迫力ある優雅さに満ちています。高さ120cmと大きめのサイズで、さぞ大きく立派な暖炉の前を飾っていたのではないかと思われます。
なお、この120cmの高さは、座るとちょうど目の辺りまでが隠れる高さといわれます。テーブルやデスクの前に置けば、手元と目線を遮ることができる便利な高さとなり、圧迫感なく仕切れるパーティションとしては人気のサイズ感といえます。
暖炉をお持ちの方はもちろん、例え暖炉の前でなくても、十分にお役立ていただけるファイヤースクリーン。ミッドヴィクトリアンの英国から、当時の空気をそのまま纏いつつすらりと佇む貴婦人のような逸品をお届けいたします。
■英国
■主素材:ローズウッド
■推定製造年代:1870年代
■サイズ:幅63/奥行46/高さ120cm
■正面のファブリックはオリジナルです。ファブリックの表面はガラスで覆われています。ごく一部にスパンコールの欠損がみられますが、よくよく見ないと気付きません。
■背面のファブリックは傷んでいたため、当店にて張替えを行っています。
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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