存在自体が愛らしいミニチュアの家具。子供用のおもちゃや見習い用等、作られた目的は様々ですが、今回はそのなかでも特別に素敵なミニチュアチェアのご紹介です。
スイスのベルン周辺では18世紀から木彫工芸が盛んでした。1870年頃にはその辺りの職人が、熊や鳥など森の動物を彫刻した家具や小物、鳩時計を旅行者向けに製作しとても評判となり、そのような木彫細工は「ブラックフォレスト(黒い森)」とよばれるようになります。実際の「黒い森」はドイツのバイエルン州(旧バイエルン王国)に位置していますが、「ブラックフォレスト」というネーミングと、その動き出しそうな野趣あふれるスタイルがまさに合致し、当時の流行となりました。そして、既に交流が盛んにおこなわれていたヨーロッパ各国で類似品が作られるようになっていったといわれています。
このミニチュアチェアは、そのブラックフォレストの流れを汲んだ彫刻作品。スイスからのお品物で、エーデルワイスがモチーフとなっています。「Edelweiss」と書きドイツ語で「気高き白」の意味をもつエーデルワイスはスイスの国花であり、アルプスの妖精、という別名を持ちます。
No.5. Dianthus silvestris, Gnaphalium leontopodium, (Edelweiss), chromolithograph by Helga von Cramm, with hymn by F. R. Havergal, 1877.
全高約65cm、座高わずか33cmの小さなチェアは、ドールや縫いぐるみ用、もしくはこのチェアだけを飾るために作られたものでしょう。座面部分が背もたれごと開くようになっており、座面下に小さな収納部があることが特徴です。小さなアクセサリーや手紙などでしたら収納可能。ここに仕舞ってドールを座らせてしまえば、誰にも見つからない秘密の収納場所の出来上がりです。
背もたれはシールドの中にエーデルワイスがカーヴィングされ、さらにシールドの周囲には蔦のようなモチーフとエーデルワイスが透かし彫りで施されています。座面にもエーデルワイス、そして小さなカブリオレレッグ風の脚と座面下幕板にもエーデルワイスの花と葉が効果的に配されています。
アルプスの妖精をモチーフとした小さなチェア。職人の手仕事の結晶であり、存在自体が妖精の様に可憐なミニチュアチェアは、古き良きものを持つ悦びを改めて私たちに教えてくれます。貴方の大切なものを仕舞いながら、アンティークの逸品をぜひご堪能ください。
■スイス
■主素材:ウォールナット
■推定製造年代:1930年代
■サイズ:幅29/奥行29/高さ65.3cm(座面までの高さ33cm)
■小さなチェアですので、お子様でも座ることはできません。
■座面と背もたれは連動して倒れます。大きめの重いドールを寄りかからせる際はご注意ください。
■座面が若干反っていますがあまり目立ちません。画像にてご確認下さい。
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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*大きさ感や開き勝手、収納部サイズなどをこちらのスタッフブログにて詳しくご紹介しております。
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