端正な佇まいと飴色のバーウォールナットが、妙なる調べを奏でるカンタベリーワットノット。
カンタベリー/Cantabulyとは、英国国教会の総本山、カンタベリー大聖堂の司教が最初に注文したことに由来する、という楽譜いれのこと。1803年発刊Thomas Sheraton's Cabinet Directoryにその記述があることから、実際にはもう少し前から使われていたと思われます。
またワットノット/Whatnotとは18世紀フランスでつくられていた「etagere/エタジェル」が基といわれる飾り棚のこと。エタジェルはやがて英国にも伝わり、19世紀前半には大変な人気となりました。このふたつを組み合わせたものが、カンタベリーワットノット。ヴィクトリア時代、それなりのお屋敷には必ずピアノがあり、良家の子女であれば音楽の嗜みは必要不可欠なものとされました。
A young woman at a piano by George Goodwin Kilburne 1880
ピアノの周りには楽譜などを納めるクオリティの高いミュージックキャビネットがあり、手元に楽譜を置くためのカンタベリーなども用意されることが多くありました。
カンタベリーとワットノットが合わさったカンタベリーワットノットは、楽譜をちょっと置いたり、広げたりするのにお誂え向きの小さな家具として、上流階級のお屋敷ではたいそう重宝されたのではないでしょうか。
ほとんどのカンタベリーワットノットはマホガニーやウォールナット、もしくはローズウッドで作られており、まさに贅沢で嗜好性の高いアイテムであるといえます。ヴィクトリア時代、後期に制作されたと思われるこのカンタベリーワットノットは、全体としては比較的シンプルな直線で構成されており、機能的な印象を受けますが、細部をみれば支柱はリングターンでリズミカルに節がつけられ、天板上には擬宝珠がポイントで掲げられている凝ったお品物。
挽物のツマミや脚部などにはジョージアンの影響がみられ、英国家具装飾のなかでも、端正な要素をうまく取り入れた凛々しいフォルムとなっています。基本はマホガニー材で構成され、化粧としてバーウォールナッが貼られている高級仕様。天板のクォータリングも見事な、芸術性の高い仕上げです。
デスクサイドに、マガジンラックとして。リビングやダイニングルームのサブテーブルとして。もちろん本来の使用方法である楽譜置きとして。どんな使い方をしても、
その品格あふれる佇まいは崩れることなく、インテリアに凛とした空気を運んでくれます。
■英国
■主素材:ウォールナット
■推定製造年代:1890年代
■サイズ:幅58/奥行37.3/高さ103.2cm(天板までの高さ98.5cm)
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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