新しい芸術の追求を体現した、Shoolbred社アールヌーヴォーホールスタンド。
世紀末に大流行したアールヌーヴォーは「新しい芸術」として装飾美術界を席巻しました。日々の生活にアートを感じさせる、英国の老舗キャビネットメーカーによる佳作をご紹介いたします。
アールヌーヴォーとは19世紀末に起こった美術運動のこと。英国のアーツ&クラフツ運動に始まり、フランスを中心としたヨーロッパ諸国に波及しました。英国ではブリティッシュ・アールヌーヴォーとして進化を続け、建築やインテリアだけでなく工芸やグラフィックといった新しい分野にも大きな影響を及ぼしました。
Divan Japonais lithograph by Henri de Toulouse-Lautrec (1892-93)
このホールスタンドはロンドンで最初の百貨店となったShoolbred社のもの。Shoolbred社は1820年代にロンドンのTottenham Court Roadにテキスタイルなどを扱う会社として創設され、1870年代にはオリジナル家具の製作を始めました。高いクオリティに加え、ショールームや広告に力を入れたことで一流キャビネットメーカーとなりました。
Illustrations from the James Shoolbred & Company's 1876 catalogue
トップに施されているのはデンティルと呼ばれるモールディング。歯形のように見えることからそう呼ばれるようになった古い意匠です。マーケットリー(絵画的象嵌)は古典とアールヌーヴォーが融合したような印象的なデザインで、デンティルの装飾とともに、このホールスタンドの大きな魅力となっています。
マーケットリーが映り込むほど艶を湛えたマホガニーの天板下には抽斗が備えてあり、前板の上部にはクオリティの証であるShoolbred社の刻印がみられます。メタルの取っ手がアーツ&クラフツからの流れを感じさせています。アーチ状のフロントとリングターンドレッグ、左右のフレットワークが装飾性豊かに、そして後ろに見える波型の支えがこの秀逸なデザインのポイントとなっているようです。
このような凝ったホールスタンドはめずらしく、玄関に置けばなんとも洒落たエントランスを演出してくれます。
生活に芸術を取り入れるアールヌーヴォーの根幹を体現したひとしなです。
■英国
■主素材:マホガニー
■推定製造年代:1890年代
■サイズ:幅92.5/奥行33.5/高さ98.5cm
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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