この上なく美しい姿をもつ、ヴィクトリアンウォールナットピアスドカーヴドサロンチェア。
美しいばかりでなく、とても印象的にみえるのは、バックアップライト(背柱)のフォルムが左右に張り出した少し珍しい形だからでしょうか。これはルネサンス・リバイバルの影響を受けたものと思われます。
1860年代までにロココリバイバルの一時的流行はおさまり、かわってルネサンスリバイバルが新しい流行になりました。この様式は非常に幅広く、暗い色の直線的形態から新古典主義(ネオクラシズム)のモチーフまで含まれたものでした。大まかではありますが、ロココの女性的なイメージに対し、やや男性的なイメージ、といえばよいでしょうか。
このチェアはまさにその時代、ロココの女性的な柔らかさ・優美さを持ちながらも、一番目立つバックアップライト(背柱)のデザインだけは新古典主義のルネサンス・リバイバルを取り入れており、1860年代としては最先端のデザインであったといえるでしょう。
バックスプラットには見事なピアスドカーヴィングがみられます。立体的に交差しているのは伝統のモチーフ・アカンサス。まるで自らの意思で絡み合っているかのような躍動感に満ちています。また、中央下部のU字型は、恐らく蹄鉄をモチーフとしていると思われます。
古代より、馬の蹄鉄は幸運のモチーフとして英国をはじめヨーロッパで愛されてきました。その幸運のモチーフと、生命力の象徴であるアカンサスを芸術的に仕上げた、ネオクラシズム・リバイバルの傑作と言えるでしょう。
座の張地は先染めのジャガード。経糸に微妙に色の異なる糸をひき、ニュアンスのあるグランドを演出。中央の存在感ある大きなストライプにあわせるのは緯糸で織りだした唐草模様です。さりげない光沢感と柔らかな質感が高級感あふれる、最高品質の織物です。前脚は柔らかくしなったカブリオレ・レッグ。フルーティング(縦溝)が施され、レッグのニーには可憐なフラワーモチーフがハイレリーフで表されています。
とろける様なウォールナットの飴色と、芸術的な透かし彫りをもつサロンチェアは、150年の時を超えてどんな幸運を運んできてくれるのでしょうか。
■英国
■主素材:ウォールナット
■推定製造年代:1860年代
■サイズ:幅45.5/奥行51.5/高さ88cm(座面までの高さ約47cm)
■複数脚在庫がある場合、杢目の見え方や形状が写真と異なるチェアもございますことをご了承ください。
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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*蹄鉄についてのお話がスタッフブログに掲載されております。
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