ローマ神話の女神に護られた、イタリアンフィデスバックホールチェア。
精緻を極めた象嵌細工は類稀な芸術性と特別な存在感をこのチェアに与えました。ルネサンス芸術発祥の地イタリアで誕生した逸品は、現代の空間にも変わることのない装飾美をもたらすことでしょう。
極めて高い装飾性をもつこのホールチェアは、全体を緻密な象嵌細工で覆われ、背もたれには精巧なエングレイヴィングが施されています。描かれているのはローマ神話に登場するフィデス神。原案は16世紀の版画家ジャン・サデラー/Johann Sadelerの版画で、信頼の女神であるフィデスが「REVERA」(真実)と書かれた本と旗を持ち、散らばった仮面のなかで倒れる女性を抑えています。仮面は本心を隠すものとされ、信頼の女神がまやかしに打ち勝つ様を描いたものと思われます。
Johann Sadeler (1550-1600/1601, Venice)
エングレイヴィングのサイドには壺から伸びる樹のインレイが施されています。壺は生命力のシンボルでもあり、そこから長く伸びる樹や葉は繁栄を願うかのようです。黒艶の光るエボナイズドと奥深い樹の色合い、そこに象嵌されたアイボリーカラーが美しいコントラストをみせています。座面や幕板、貫までが象嵌で埋め尽くされた驚くべき完成度です。
このチェアのもうひとつの魅力は迫力溢れるツイスト。このようなツイストは英国ではバーリーシュガー・ツイストと呼ばれます。無限に続くように上へと向かうツイストは、背の女神に相応しい意匠ではないでしょうか。ひとつひとつの丸みに艶が光り、ツイストにまで象嵌が散りばめられています。この壮麗で静謐な佇まいは、家具を越えた芸術作品と言っても過言ではありません。
存在そのものが芸術のようなホールチェアは、印象的なエントランスを演出します。人目を引く場所はもちろん、プライベートコレクションのように私室に飾るのも贅沢な愉しみ方ではないでしょうか。
信頼の女神フィデスが、癒しと美しさに満ちた空間を与えてくれることでしょう。
■イタリア
■主素材:ローズウッド
■推定製造年代:1870年代
■サイズ:幅41/奥行41.5/高さ102cm(座面までの高さ47.5cm)
■構造上、ダイニングチェアのような日常使いにはお勧め致しません。
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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*イタリアンフィデスバックホールチェアについてスタッフブログにてご紹介しております。
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