精緻なマーケットリーと風雅な佇まいが印象的な、ヴィクトリアンオクタゴナルセンターテーブル。
17世紀のヨーロッパでは伝統的なバロックやロココなど華麗で豪奢な装飾が頂点を極めていました。いわば飽和状態にあったヨーロッパの装飾様式のなかで求められた新たな流行、その声に対する一つの答えがシノワズリ(中国趣味)でした。
このテーブルは、そんな当時の流行の最先端を踏襲した後期ヴィクトリアンの逸品です。
その流行は陶磁器から始まり、中国独特のデザインや技術を真似ようと試行錯誤が繰り返され、マイセンでも花瓶や茶器が模倣されました。ルイ14世は寵姫モンテスパン侯爵夫人のために小トリアノンを造営し、その外観は磁器で覆われ「磁器のトリアノン」と呼ばれました。当然、家具や室内装飾にも流行の波は押し寄せ、家具職人トーマス・チッペンデールは雷文細工の透かし彫りや組格子、釣鐘など中国風の装飾をした家具を数多くデザインしています。
八角形で整えられた天板は、ローズウッドの化粧張りを美しく纏い、その大胆に揺れる木目を見飽きることはありません。様々な色味を持つローズウッドは艶もまた素晴らしく、年月を重ねるごとに美しさも重ねてゆく銘木です。中央には精彩なアラベスクのマーケットリーがあしらわれ、色鮮やかな象嵌が風雅な趣をより高めています。
このテーブルの特徴のひとつ、ストレッチャープラットフォームは愛らしい小さなターニングの支柱で囲われ、格式高いお屋敷の庭のようにも見えます。絵付けされた花瓶や植物を置くのにも丁度良い広さではないでしょうか。また、脚はギャラリーと合わせた挽き物の上部に天板と同じ化粧張りで揃えた下部を組み合わせ、全体が二つのデザインで構成されている様子がわかります。また、天板だけではなく脚にもストリンギング(線象嵌)が巡らされ、オクタゴナルの直線的なフォルムをさりげなく引き立たせています。センターテーブルとしてお部屋の中心にふさわしい、清新かつ典雅な雰囲気を漂わせています。
中国発祥である風水において八は幸運をもたらす数字であり、日々の生活に取り入れられていて、八角形のテーブルやミラーなど、家具でもその形を見ることができます。ヨーロッパではそんな異国の文化も大きな好奇心をもって迎えられたことでしょう。
シノワズリの趣が流れるテーブルで、東洋に憧れた貴族のようにお茶を嗜んでみてはいかがでしょうか。
【Teestunde by Albert Chevallier Tayler (British, 1862-1925)】
■英国
■主素材:ローズウッド
■推定製造年代:1890年代
■サイズ:幅91.7/奥行90.2/高さ75cm
■こちらのお品物はアンティークです。新品家具にはない小傷や歪み等がございます。アンティーク家具の特性につきましては
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